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ZEBとZEHの違いとは?対象建物や基準・補助金の比較をわかりやすく解説
ZEB(ゼロエネルギービル)とZEH(ゼロエネルギーハウス)は、いずれも建物のエネルギー消費を実質ゼロに近づける制度ですが、対象建物や評価基準、補助金の内容には違いがあります。
2025年度からの省エネ基準適合義務化を控え、その違いを正しく理解することが重要です。この記事では、両者の特徴と相違点をわかりやすく解説します。
ZEBとZEHはそもそも何が違うのか

省エネ建築の世界では、対象が「ビル」なのか「住宅」なのかによって、適用される制度が明確に分かれています。まずは、ZEBとZEHの根本的な定義の違いから整理していきましょう。
ZEBは非住宅、ZEHは住宅が対象
最も大きな違いは、その建物が「何に使われるか」という点にあります。
ZEB(Net Zero Energy Building)は、事務所、店舗、病院、学校、ホテルといった「非住宅建築物」を対象とした制度です。一方で、ZEH(Net Zero Energy House)は、戸建て住宅やマンション(集合住宅)などの「居住を目的とした建物」を対象としています。
1階が店舗、2階以上が住宅といった併用住宅の場合は、原則として住宅部分にZEH、店舗部分にZEBの基準が適用されます。建物の用途によって目指すべき基準や評価の枠組みが異なるため、計画の初期段階で整理しておくことが重要です。
それぞれの省エネ率の定義と計算の考え方
ZEBもZEHも、「省エネ(エネルギーを減らす)」と「創エネ(エネルギーを作る)」を組み合わせて、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロに近づけるという考え方は共通しています。しかし、その「計算の仕組み」には細かな違いがあります。
住宅であるZEHの場合、主なエネルギー消費源は「暖冷房、換気、給湯、照明」の4項目です。
一方、非住宅であるZEBではこれらに加えて「昇降機(エレベーター)」などが含まれ、さらに建物の用途(事務所か病院かなど)によって基準となるエネルギー消費量が細かく設定されています。
また、住宅性能評価制度における省エネ基準と同様に、どちらも「外皮性能(断熱など)」と「設備性能」の両面から評価されますが、ZEBの方が規模が大きく用途が多岐にわたるため、計算のプロセスはより複雑になる傾向があるといえるでしょう。
ZEBとZEHの基準・認定区分の比較

ZEBとZEHには、それぞれ達成度に応じた「ランク(区分)」が設けられています。すべての建物で「100%削減」を実現するのは現実的に難しいため、段階的な目標が設定されているのです。
ZEBの4段階(ZEB/Nearly ZEB/ZEB Ready/ZEB Oriented)
非住宅を対象としたZEBには、以下の4つの区分があります。
- ・『ZEB』: 省エネと創エネを合わせ、100%以上のエネルギーを削減したもの。
- ・Nearly ZEB: 創エネを含めて75%以上削減したもの。
- ・ZEB Ready: 創エネを除き、省エネ設備だけで50%以上削減したもの。
- ・ZEB Oriented: 大規模建築物(延べ面積1万㎡以上)向けで、創エネを除き用途に応じた規定率をクリアしたもの。
このように、太陽光発電などの創エネ設備がなくても、「ZEB Ready」や「ZEB Oriented」として評価を受けることが可能です。屋根面積が限られる都市部のビルにとっても、現実的な選択肢のひとつといえます。
ZEHの区分(ZEH/Nearly ZEH/ZEH Oriented)
住宅向けのZEHにも、ZEBと似た区分が存在しますが、その基準値や名称には独自の特徴があります。
- ・ZEH: 省エネと創エネを合わせ、100%以上のエネルギーを削減した住宅。
- ・Nearly ZEH: 創エネを含めて75%以上削減した住宅。主に寒冷地や低日射地域などが対象となるケースが多いでしょう。
- ・ZEH Oriented: 都市部の狭小地などに建てられる住宅向けで、創エネ(太陽光など)がなくても、高い断熱性能と省エネ設備で基準を満たせば認定されます。
また、最近ではさらに高い性能を求める「ZEH+(ゼープラス)」や、集合住宅(マンション)を対象とした「ZEH-M(ゼッチ・マンション)」といった区分も運用されています。
住宅の形態に合わせて、きめ細かく基準が設定されているのが、ZEHの特徴といえるかもしれません。
どちらの制度が自分の建物に当てはまるか
自分のプロジェクトがどちらに該当するかは、基本的には「確認申請上の用途」に準じます。しかし、実務上では「どの区分を目指すのが最もコストパフォーマンスが良いか」を判断するのが難しい場合もあるでしょう。
たとえば、小規模な店舗併用住宅であれば、ZEHの基準に寄せて設計したほうが進めやすいケースがあります。一方、中規模以上のオフィスビルでは、補助金の活用を見据え「ZEB Ready」を最低ラインに設定する戦略が有効です。
BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)などの評価機関に事前相談し、どの制度を選択すべきかシミュレーションしておくことが、プロジェクトを円滑に進めるうえで重要です。
補助金・支援制度の違い

ZEBとZEHの普及を後押しするため、国はそれぞれ別々の予算枠で強力な補助金制度を用意しています。
ZEB向けの主な補助金制度
ZEBの補助金は、主に環境省や経済産業省が所管しています。 代表的なものに「ZEB実証事業」があり、非住宅建築物の新築や既築の改修に対して、高効率な空調・照明・換気システムの導入費用の一部が補助されます。
補助金額は数千万円から、大規模なものでは数億円に達することもあり、事業者にとっては極めて大きなインセンティブとなるでしょう。
ただし、ZEBの補助金は「先着順」ではなく「公募・採択」形式であることが多いため、省エネ性能の高さだけでなく、事業の先進性や確実性も評価の対象となります。
登録住宅性能評価機関などによるBELS評価書の取得が、申請の必須条件となっているケースがほとんどであるため、早めの準備が大切です。
ZEH向けの主な補助金制度
一方、ZEHの補助金は、個人住宅やハウスメーカー、マンションデベロッパーなどを対象としています。 「ZEH支援事業」などが代表的で、一戸あたり数十万円から百万円程度の定額、または工事費の一部が補助されます。
また「子育てエコホーム支援事業」のような時限的な大型事業と組み合わせて活用できるケースもあり、一般消費者にとっても馴染み深いものとなっています。
ZEHの場合は、ZEBに比べると一件あたりの金額は少額ですが、対象となる件数が非常に多いため、公募期間内であっても予算が上限に達し次第、受付が終了してしまうことがあります。
住宅の取得を検討されている方にとっては、スピード感を持った決断が求められる制度といえるでしょう。
申請窓口と手続きの流れの違い
ZEBとZEHでは、申請先の窓口(執行団体)も異なります。ZEBは一般社団法人環境イノベーション情報機構(EIC)などが担当し、ZEHは一般社団法人環境共創イノベーション実施機構(SII)などが窓口になることが一般的です。
手続きの流れについても、ZEBは設計段階での詳細なエネルギーシミュレーションが必要なため、専門の設計コンサルタントや計算代行業者との連携が不可欠です。
ZEHの場合は、ハウスメーカーや工務店が標準的な仕様としてパッケージ化していることも多いですが、注文住宅などで独自の設計を行う場合は、やはり正確な省エネ計算とBELSの取得がスムーズな申請の第一歩です。
ZEB・ZEHを検討する際の注意点

省エネ性能の高い建物を建てることは、環境面だけでなく経済面でもメリットが大きいですが、実務上はいくつか注意すべき点があります。
建物用途によって選ぶ制度が変わる
前述の通り、建物用途が「住宅」か「非住宅」かによって、ZEBかZEHかが決まります。
注意したいのは、たとえば「老人ホーム」や「学生寮」のように、住居としての側面と施設としての側面の両方を持つ建物です。これらは、建築基準法上の扱いや補助金の公募要領によって、ZEBとして扱うべきかZEHとして扱うべきかが変わる場合があります。
制度の選択を誤ると、受けられるはずの補助金が受けられなくなったり、設計のやり直しが発生したりするリスクがあります。用途が複雑な場合は、設計の初期段階で専門機関や行政に確認を取っておくことが、何よりも大切です。
設計段階から省エネ計画が必要
ZEBやZEHは、建物が完成してから「後付け」で対応できるものではありません。窓の配置、断熱材の種類、設備の選定、さらには太陽光パネルの設置位置に至るまで、設計の根幹に関わる部分で性能が決まってしまいます。
特に、補助金の申請は「着工前」に行うのが原則です。設計が固まり、確認申請を出すのと並行して、省エネ計算を進め、ZEB/ZEHの要件を満たしているかを確認しなければなりません。
後から「やっぱりZEB Readyにしたい」と思っても、構造上や予算上の制約で変更が難しくなるケースは少なくありません。まさに、設計の最初の一歩が、その建物の「省エネ価値」を左右すると言っても過言ではないでしょう。
専門家への相談で手続きをスムーズに
ZEBやZEHの申請には、膨大な計算書類や図面が必要です。これを自社リソースだけで完結させるのは、設計者にとって非常に重い負担となるでしょう。また、頻繁に行われる法改正や補助金要件の変更を常に追いかけ続けるのも容易ではありません。
そこで、省エネ計算の代行やBELSの申請サポートを行う専門家の存在が重要になります。地域に根ざした評価機関や、現場対応が迅速なパートナーと連携すれば、手続きのミスを防ぎながら、認定取得や補助金獲得までを効率的に進められます。
専門家の知見を借りることは、単なる業務の効率化だけでなく、建物全体の品質向上にも繋がるはずです。
まとめ
ZEBは事務所や商業施設などの非住宅、ZEHは戸建てやマンションなどの住宅を対象とする省エネ制度です。基準や補助金の内容が異なるため、自身の建物用途に合わせた選択が重要になります。
いずれも資産価値の向上や長期的なランニングコスト削減に寄与する有効な仕組みです。2025年の省エネ適合義務化を契機に、設計初期から専門家と連携し、制度を活用しながら持続可能で高性能な建物づくりを進めていきましょう。
