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Nearly ZEBとは?基準や補助金の活用方法、ZEBとの違いをわかりやすく解説
Nearly ZEB(ニアリーゼブ)とは、ZEB(ゼロエネルギービル)を目指す4段階の区分のひとつで、省エネと創エネを組み合わせて年間の一次エネルギー消費量を75%以上削減した建物を指します。
完全なZEBには届かないものの、極めて高い省エネ性能を持つ建物として評価されます。
この記事では、Nearly ZEBの具体的な基準や補助金との関係、そして完全なZEBとの違いを詳しく解説します。
Nearly ZEBとはどんな位置づけか

ZEBという大きな枠組みの中で、Nearly ZEBがどのような立ち位置にあるのかについて、見ていきましょう。
Nearly ZEBの定義と省エネ率75%の意味
Nearly ZEBは、一次エネルギー消費量を基準値から75%以上削減した建物を指します。この削減率には、建物の省エネ性能向上だけでなく、太陽光発電などの再生可能エネルギーによる創エネ量も含めて評価されます。
具体的には、外皮性能の向上や高効率設備の導入、再生可能エネルギーの活用などを組み合わせ、建物の一次エネルギー消費量を基準値から75%以上削減することが求められます。
これは一般的な建物と比較して大幅にエネルギー消費を抑えられることを意味しており、高い環境性能を備えた建物といえます。
ZEB・ZEB Ready・ZEB Orientedとの比較
ZEBの4つの区分を整理すると、Nearly ZEBの立ち位置がより鮮明に見えてくるはずです。
- ・『ZEB』: 100%以上の削減。エネルギー収支がプラスマイナスゼロ、あるいはプラスになる状態
- ・Nearly ZEB: 75%以上の削減を達成した建物で、ZEBに最も近いランク
- ・ZEB Ready: 再生可能エネルギーを除いた省エネのみで50%以上削減した建物
- ・ZEB Oriented:主に大規模建築物を対象とし、用途ごとに設定された基準に基づき30%以上の削減を目指す区分
Nearly ZEBは、ZEB Ready(50%以上削減)よりもさらに高い省エネ性能に加え、太陽光発電などの再生可能エネルギーを組み合わせることで達成される指標です。
都市部の高層ビルなど、屋根面積の制約で100%削減が物理的に難しい場合でも、このNearly ZEBを取得することで「最高峰の省エネビル」としての価値を公的にアピールできます。
Nearly ZEBを実現するための方法

Nearly ZEBを達成するためには、設計の初期段階から建築と設備の緊密な連携が求められます。
省エネ設備の導入で75%削減を目指す
Nearly ZEBの基盤となるのは、創エネに頼る前の「徹底的な省エネ」です。 まずは、高性能な断熱材や遮熱ガラスを用いて外壁や窓の性能を高め、空調負荷を最小限に抑えなければなりません。
その上で、最新のLED照明や高効率な空調機、全熱交換器などをパズルのように組み合わせ、標準的な建物よりも50%以上エネルギーを削ぎ落としていくことになります。
この段階で「どれだけ無駄を省けるか」が、その後の創エネ設備の負担を左右することになるでしょう。BEMS(ビルエネルギー管理システム)を活用して運用状況を可視化し、常に最適な状態に保つ計画を立てることも、実務上は非常に有効な手段といえます。
再生可能エネルギーで残りを補う考え方
省エネだけで50%以上を削減した後は、残りの25%以上のエネルギーを太陽光発電などの再生可能エネルギーで賄う必要があります。
既存の屋上スペースを最大限に活用し、発電効率の良いパネルを設置することはもちろん、最近では壁面設置やカーポート型の太陽光発電を検討するケースも増えています。
Neary ZEBは「100%(正味ゼロ)ではない」という点に、現実的なメリットがあります。 すべてのエネルギーを自給自足できなくても、75%という高い壁をクリアすることで、建物のレジリエンス(停電時の自立性)は飛躍的に高まります。
非常時にも最低限の機能を維持できる建物は、オーナーにとってもテナントにとっても、大きな安心材料となるはずです。
省エネ計算で目標達成を確認する
Nearly ZEBの認定を受けるためには、設計内容が本当に75%削減に達しているかを「一次エネルギー消費量計算」によって証明しなければなりません。
この計算プロセスでは、窓の面積や方位、設備の型番一つひとつが数値に影響を与えます。住宅性能評価制度における省エネ評価と同様に、客観的なデータに基づいて算出されるため、ごまかしのきかない厳格な審査が行われることになるでしょう。
計算の結果、もし74%にとどまってしまえば、Neary ZEBを名乗ることはできません。だからこそ、設計の途中でこまめにシミュレーションを行い、基準を確実にクリアできるラインを見極めることが、実務者にとっての生命線となるはずです。
Nearly ZEBで活用できる補助金と申請

Neary ZEBのような高性能な建物を建てる際、最大の懸念事項はコストでしょう。しかし、国はZEB普及のために多額の補助金を用意しており、Nearly ZEBはその対象となります。
Nearly ZEBが対象となる主な補助金制度
Nearly ZEBを目指すプロジェクトであれば、環境省や経済産業省が実施する「ZEB実証事業」への申請が検討できるでしょう。
これらの事業では、工事費の一部が補助されるため、高性能な窓や空調、太陽光パネルの導入にかかる初期投資の増加分を、大幅に相殺することが可能になります。
補助金の要件は「ZEB Ready以上」となっていることが多いですが、Neary ZEBはZEB Readyよりもランクが高いため、審査において「先進的な取り組み」として評価されやすい傾向にあるかもしれません。
また、自治体独自の省エネ助成金と併用できるケースもあるため、情報を多角的に収集することが資金計画の成功に直結するでしょう。
申請に必要な書類と手続きの流れ
補助金申請には、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の評価書や詳細な省エネ計算書、そして設計図面などの膨大な書類が必要です。 手続きの流れとしては、一般的に以下のようなステップを踏むことになります。
- 1.設計・計算: 75%削減をクリアする設計案を作成。
- 2.第三者認証の取得: 登録住宅性能評価機関などからBELS評価書の発行を受ける。
- 3.交付申請: 補助金の執行団体に書類を提出。
- 4.審査・採択: 審査を通過し「交付決定」を受ける。
特に、住宅性能評価機関などの専門家のチェックを通した書類は信頼性が高く、審査をスムーズに進めるための強力な武器となります。複雑な申請手続きを円滑に進めるためには、早めの準備と正確な書類作成が欠かせません。
補助金申請でつまずきやすいポイント
補助金申請において最も注意すべきは、「スケジュールの不整合」です。多くの補助金は「交付決定後の着工」が原則となっています。
審査に時間がかかり着工が遅れると、建物全体の工期に影響を与えてしまいます。逆に、補助金の決定を待たずに着工してしまうと、その時点で補助対象外となり、多額の資金計画が狂ってしまうことになりかねません。
また、補助金の公募期間は限定されているため、設計が仕上がるタイミングと公募時期が合わなければ、チャンスを逃してしまうこともあるでしょう。常に最新の補助金情報を把握し、余裕を持った工程表を作成することが、リスク回避の最善策といえます。
Nearly ZEBを取得する際の注意点

Neary ZEBの取得には多くのメリットがありますが、実務を進める上ではいくつか見落としがちな注意点も存在します。
省エネ計算の精度が評価結果を左右する
Nearly ZEBの判定は、極めて緻密な計算に基づいています。 たとえば、同じ空調機であっても、設置する部屋の用途や換気回数の設定ひとつで、計算上のエネルギー消費量は変動してしまいます。
計算ソフトへの入力ミスや、最新の法改正に伴う評価基準の変更への対応漏れがあると、目標としていた75%に届かないという事態が起こり得ます。
正確な省エネ計算を行うことは、単に認定を取るためだけでなく、竣工後の実際の光熱費を予測する上でも重要になります。
計算リソースが不足している場合は、信頼できる計算代行業者や評価機関と密に連携を取り、シミュレーションの精度を高めておくことが不可欠です。
設計変更が生じると再計算が必要になる
建物の建築プロセスにおいて、設計変更は避けられない側面があるかもしれません。しかし、省エネ性能に関わる箇所の変更は、Neary ZEBの認定維持に直結します。
「窓のサイズを少し大きくした」「照明の機種を安価なものに変えた」といった、一見些細な変更であっても、一次エネルギー消費量の再計算が必要になります。
もし再計算を行わずに工事を進め、最終的な性能が75%を下回ってしまった場合、BELSのランクが下がったり、最悪の場合は受給した補助金の返還を求められたりするリスクもあるでしょう。
設計変更が発生した際には、即座に省エネ性能への影響をチェックする体制を整えておくことが、リスク管理として非常に大切です。
完全なZEB達成を視野に入れた計画を
Nearly ZEB(75%削減)を目標とする際、同時に検討しておきたいのが「将来的な100%(ZEB)へのステップアップ」です。
今は予算や敷地の制約で100%に届かなくても、将来的にさらに効率の良いパネルへ交換したり、蓄電池を増設したりすることで、完全なZEB化が可能になるような余地を持たせておきましょう。
たとえば、配管や架台のスペースをあらかじめ確保しておくだけでも、将来の改修コストは劇的に抑えられます。
Neary ZEBを「完成形」とするのではなく、建物の資産価値を数十年単位で維持・向上させていくための「高度な通過点」と捉える視点こそが、これからのビル経営には求められているのかもしれません。
まとめ
Nearly ZEBは、省エネと創エネを組み合わせて75%以上のエネルギー削減を達成した、極めて高性能な建物の区分です。完全なZEB(100%削減)への重要なステップであり、多額の補助金の対象にもなるなど、環境性能と経済性のバランスが取れた選択肢といえます。
しかし、その実現には正確な省エネ計算と適切な設備選定、そして煩雑な申請手続きが欠かせません。設計の早い段階から専門家や評価機関と連携し、確実なシミュレーションを重ねていくことが、成功への最短ルートとなります。
Nearly ZEBという誇り高い称号を目指し、持続可能な未来に向けた価値ある建物づくりを進めていきましょう。
