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避難安全検証法とは?概要・メリット・ルールを分かりやすく解説
避難安全検証法は、火災時の避難の安全性を計算で確かめることで、建築基準法施行令が定める仕様規定の一部を適用除外にできる手続きです。排煙設備や内装制限、直通階段までの歩行距離の制限が外れるため、吹抜けや天井の高い空間を計画しやすくなります。ただし外せる規定は条文に列挙されたものに限られ、重複距離や面積区画は残る点に注意が必要です。
当記事では、3種類の検証法の違い、ルートB1・B2・Cの検証方法、適用除外できる規定、利用時の注意点を整理します。
1. 避難安全検証法とは?
避難安全検証法は、火災が発生した場合に建物からの避難が安全に行われることを、計算によって確かめる方法です。検証によって避難安全性能が確かめられた部分では、排煙設備や内装制限といった規定が適用されません。規定には、条文の数値基準をそのまま満たす設計と、計算で安全性を示す設計の2種類があります。両者の関係を整理しましょう。
1-1. 仕様規定(ルートA)と性能規定(ルートB・C)の違い
仕様規定は法令が定めた数値や構造をそのまま満たす設計手法で、性能規定は求められる安全性能を計算で示す設計手法です。建築基準法の避難関係規定では、次の3つのルートが用意されています。
| ルート | 適合の確かめ方 | 位置づけ |
|---|---|---|
| ルートA | 施行令の数値基準をそのまま満たす | 仕様規定 |
| ルートB | 国土交通大臣が定める方法(告示)で検証する | 性能規定(避難安全検証法) |
| ルートC | 告示以外の方法で検証し、国土交通大臣の認定を受ける | 性能規定(大臣認定) |
ルートAでは、廊下の幅、直通階段までの歩行距離、排煙設備の設置、内装制限といった条文の基準を図面上で1つずつ満たします。判断に迷う余地が少なく、審査も定型的に進む点が利点です。
一方、天井の高い空間や吹抜けを設けると、ルートAでは排煙口や防煙垂れ壁が必要になり、意匠上の制約が生まれます。避難安全検証法を使えば、その空間で実際に避難が完了するかどうかを煙の挙動と避難時間から確かめ、条文の基準に代えて安全性を説明できます。
検証の対象になるのは避難に関する一部の規定だけです。構造、採光、省エネ基準などは検証法とは別に確認が必要になります。
2. 避難安全検証法には「区画・階・全館」の3種類がある
避難安全検証法は、検証する範囲によって区画避難安全検証法、階避難安全検証法、全館避難安全検証法の3種類に分かれます。範囲が広いほど適用除外にできる規定も増え、その分だけ計算量と費用が大きくなります。3種類の対象は次の通りです。
2-1. 区画避難安全検証法
区画避難安全検証法は、準耐火構造の床や壁、防火設備で区画された部分を単位として、その区画部分からの避難の安全を確かめる方法です。
対象は1つの階の中で区画された部分に限られ、2つ以上の階にわたって区画されたものは含まれません。適用除外にできるのは、排煙設備の設置と構造を定めた規定、および内装制限の規定です。階全体を検証しなくてよいため、特定の一室だけ排煙設備を省きたい場合や、内装に木材を使いたい区画がある場合に選ばれます。
2-2. 階避難安全検証法
階避難安全検証法は、建物の階を単位として、その階にいる人が直通階段までの避難を終えるまでの安全を確かめる方法です。
計算は2段階に分かれる点が特徴です。まず階の各居室について、居室からの避難が終わるまでの安全を確かめます。次に階の各火災室について、階にいる人すべてが直通階段までたどり着くまでの安全を確かめる流れです。
検証では、階のどの居室で火災が起きた場合も想定します。1つの居室を火災室と仮定した計算を居室の数だけ繰り返すため、部屋数が多い階ほど計算量は膨らむ点に留意が必要です。
適用除外の範囲は区画避難より広く、廊下の幅、直通階段までの歩行距離、特別避難階段の構造の一部、排煙設備、内装制限の規定が対象になります。物品販売業を営む店舗では、屋上広場も階に含めて扱います。
2-3. 全館避難安全検証法
全館避難安全検証法は、建物全体を単位として、在館者が地上までの避難を終えるまでの安全を確かめる方法です。
階避難で対象になる規定に加えて、竪穴区画や高層区画、異種用途区画といった防火区画の規定も適用除外にできます。屋外への出口の幅を定めた規定も対象です。
計算は、階段室を経由する避難経路を建物全体でつないで行います。階ごとに区切って検証する場合よりも、想定するケースは増えます。
検証の範囲が広い分、想定する火災室の数も増え、計算と図書作成にかかる費用と期間は3種類のうち最も大きくなる傾向です。吹抜けで複数の階がつながる商業施設や、アトリウムを持つ建物のように、竪穴区画を設けずに空間を連続させたい計画で採用されます。
3. 避難安全検証法のルートB1・B2・Cの違い
ルートBは、判定の考え方によってB1とB2に分かれます。B1は避難に要する時間で判定し、B2は避難が完了した時点の煙の高さで判定します。告示によらない方法で検証し、国土交通大臣の認定を受けるのがルートCです。3つの検証方法を順に解説します。
3-1. ルートB1|避難に要する時間をもとに検証する
ルートB1は、避難が終わるまでに要する時間が、煙やガスが避難上支障のある高さまで降下するのに要する時間を超えないことを確かめる方法です。2つの時間を比較するため、時間判定法とも呼ばれます。
施行令では、避難時間を居室の用途と床面積、出口までの歩行距離、出口の幅から求めると定めています。一方、煙の降下時間の計算条件は、居室の用途、床面積、天井の高さ、排煙設備の構造、壁と天井の仕上げ材料の種類です。避難時間が煙の降下時間より短ければ、基準に適合すると判断されます。
3-2. ルートB2|煙やガスの高さをもとに検証する
ルートB2は、避難が終わった時点の煙やガスの高さが、避難上支障のある高さとして国土交通大臣が定める高さを下回らないことを確かめる方法です。煙層の位置で判定するため、煙高さ判定法とも呼ばれます。
B1との違いは、計算条件に消火設備の構造が加わる点です。B1の計算条件は、居室の用途、床面積、天井の高さ、排煙設備の構造、内装材の種類です。B2はこれらに消火設備を加えて煙の高さを求めるため、スプリンクラー設備を備えた建物ではその効果を計算条件に含められます。
3-3. ルートC|告示以外の方法で検証し大臣認定を受ける
ルートCは、告示に定められた計算方法によらず、独自の解析で避難安全性能を示して国土交通大臣の認定を受ける方法です。施行令の各条は、検証法で確かめられたものと大臣の認定を受けたものを並べて規定しており、認定を受けた建物では検証法と同じ規定が適用除外になります。
火災の成長や煙の流動を数値解析で再現するなど、告示の計算式では扱えない条件を評価できる点が利点です。避難者の行動を時間軸に沿ってシミュレーションする手法も用いられます。
ただし指定性能評価機関の評価を経てから認定を申請するため、期間と費用はルートBより大きくなる点に注意が必要です。超高層建築物や大規模な複合施設のように、告示の前提から外れる計画で選ばれます。
4. 避難安全検証法で適用除外できる主な規定
適用除外にできる規定は条文に列挙されており、検証法の種類ごとに範囲が決まっています。排煙設備と内装制限は3種類すべてで対象になり、廊下の幅や歩行距離は階避難以上、防火区画は全館避難でのみ対象です。ここでは、主な規定の対応関係を整理します。
4-1. 排煙設備に関する規定
排煙設備については、設置を定めた施行令第126条の2と、構造を定めた第126条の3が適用除外の対象です。3種類の検証法すべてで外せるため、階全体を検証せずに排煙設備を省ける点が区画避難安全検証法の特色になります。
排煙設備が不要になると、排煙口や排煙ダクト、排煙機の設置費用がかからず、防煙垂れ壁による空間の分断も生じません。天井の高い店舗やホールでは、排煙口の位置や排煙風量を検討する作業自体がなくなります。
気をつけたいのは、建築基準法の排煙設備と消防法の排煙設備が別の規定である点です。適用除外の対象は建築基準法施行令に列挙された規定に限られるため、消防法に基づく設置義務は避難安全検証法では外れません。所轄の消防機関に別途確認しましょう。
4-2. 避難施設・歩行距離に関する規定
避難施設に関しては、廊下の幅を定めた施行令第119条、直通階段までの歩行距離を定めた第120条、特別避難階段の構造を定めた第123条第3項の一部が対象で、いずれも階避難安全検証法と全館避難安全検証法で適用除外にできます。
全館避難安全検証法では、屋外への出口を定めた第125条第1項と第3項、物品販売業を営む店舗の避難階段の幅を定めた第124条第1項も対象に加わります。区画避難安全検証法では、これらの規定はいずれも外せません。
歩行距離の制限が外れると、居室から直通階段までの距離を法定値より長くとれます。ワンフロアの面積が大きい事務所では、階段やエレベーターを平面の片側にまとめる構成も検討できます。
4-3. 防火区画・内装制限に関する規定
内装制限を定めた施行令第128条の5は、3種類すべてで適用除外の対象です。防火区画を定めた第112条の一部は、全館避難安全検証法でのみ対象になります。
内装制限が外れる範囲からは、同条第2項、第6項、第7項と階段に係る部分が除かれます。緩和の中心は、居室と、居室から地上に通じる廊下の仕上げです。壁と天井に木材を使いたい飲食店や物販店で用いられます。
全館避難安全検証法で対象になる防火区画は、11階以上の部分を100平方メートル以内ごとに区切る高層区画、吹抜けや階段室を区切る竪穴区画、法第27条に該当する部分とその他の部分を区切る異種用途区画です。吹抜けで複数の階を連続させる計画では、竪穴区画を外せるかどうかで階段室やエレベーターホールの囲い方が変わります。
5. 避難安全検証法を利用するメリット
避難安全検証法を使う利点は、意匠上の制約が外れて設計の自由度が上がること、設備と工事の量を減らせる場合があることの2点です。排煙設備や防煙垂れ壁を省ければ、天井の見せ方と設備工事費の両方に影響します。設計面とコスト面に分けて解説します。
5-1. 建物の設計自由度を高められる
最も大きい効果は、排煙設備と防煙垂れ壁の制約から離れて空間を計画できる点です。防煙垂れ壁は天井面から50センチメートル以上下方に突出させる必要があり、連続した天井面のデザインを妨げます。
避難安全検証法で安全性を確かめれば、垂れ壁のない開放的な天井や、複数の階にわたる吹抜けを計画できます。全館避難安全検証法まで進めば竪穴区画も対象です。階段やエレベーターホールを含めて空間を連続させる構成も選べます。
内装制限が外れる範囲では、仕上げに使える材料の幅も広がる点が利点です。ホテルのロビーや商業施設の共用部のように、空間の印象が集客や賃料に影響する用途では、検証費用をかけて内装の自由度を確保する判断もあります。
5-2. 設備や工事を合理化してコストを抑えられる場合がある
排煙設備を省ければ、排煙機や排煙ダクトの設置費用に加えて、竣工後の点検と更新にかかる費用も抑えられます。排煙設備は特定行政庁が指定する建築設備の定期検査の対象になる場合があるため、設備そのものがなければ検査も不要です。
天井裏を通るダクトが減れば、設備スペースにも余裕が生まれます。同じ天井高さを確保しながら階高を抑えられる計画も可能です。
ただし検証には計算と図書作成の費用がかかり、審査にも期間が必要です。削減できる工事費と検証にかかる費用を比べると、規模の小さい建物では効果が出ないこともあります。基本設計の段階で両者を概算し、検証法を使うかどうかを判断してください。
6. 避難安全検証法を利用するときの注意点
避難安全検証法には、使える建物の条件と、検証しても外せない規定があります。適用できる範囲を取り違えたまま計画を進めると、確認申請の段階で手戻りが生じます。4つの注意点を確認しましょう。
6-1. 建物の構造や用途によって適用できない場合がある
避難安全検証法を使えるのは、主要構造部が準耐火構造の建築物と、主要構造部が不燃材料で造られた建築物に限られます。特定主要構造部を耐火構造とした建築物は、準耐火構造の建築物に含めて扱われます。
主要構造部が準耐火構造に該当しない木造建築物では、検証法そのものを選べません。計画の初期段階で構造の仕様を確かめておく必要があります。
区画避難安全検証法では、2つ以上の階にわたって区画された部分も対象から外れます。吹抜けを含む区画を一体で検証したい場合は、階避難安全検証法か全館避難安全検証法の適用を検討しましょう。
6-2. すべての避難・防火規定を適用除外できるわけではない
適用除外の対象は、施行令の各条に列挙された規定に限られます。列挙されていない規定は、検証で安全性を示しても残ります。
たとえば、2つ以上の直通階段の設置を定めた第121条、避難階段の設置を定めた第122条、避難階段と特別避難階段の構造を定めた第123条の大部分は対象外です。階段の数そのものを減らす目的では使えません。
検証法で外せるのは、避難の安全性を計算で説明できる範囲の規定です。避難経路そのものを形づくる階段の数や位置は、計算の前提条件として扱われます。
建築基準法以外の法令も対象外になります。消防法に基づく消防用設備等の設置基準は検証法では変わらないため、建築と消防の双方で協議を進めましょう。
6-3. 重複距離や面積区画は原則として適用除外できない
重複距離を定めた施行令第121条第3項は、適用除外の対象に含まれません。歩行距離を定めた第120条が対象になるため、混同しやすい部分です。
重複距離とは、居室の各部分から2つの直通階段へ向かう経路が共通する区間の長さを指します。この区間は歩行距離の2分の1以下に抑える必要があり、検証法を使っても制限は残ります。ただし重複区間を経由せずに避難上有効なバルコニーや屋外通路へ避難できる場合は、制限の対象外です。
6-4. 設計変更時には再検証や計画変更が必要になることがある
避難安全検証法は、内装材の種類、排煙設備の構造、間仕切りの位置、室の用途と床面積を計算条件として使います。いずれかが変われば検証の前提も変わるため、再計算が必要になります。
テナントの入れ替えにともなう用途変更や、什器のレイアウト変更で出口までの歩行距離が延びる場合も対象です。工事中に変更が生じたときは、計画変更の確認申請が必要になることもあります。
検証を前提とした建物は、竣工後も計算条件を維持しなければなりません。検証に用いた図書と計算結果を保管し、改修や用途変更の際に参照できる状態にしておきましょう。
まとめ
避難安全検証法は、避難の安全性を計算で確かめることで、排煙設備や内装制限、歩行距離といった仕様規定を適用除外にできる手続きです。検証の範囲によって区画・階・全館の3種類があり、判定の考え方でルートB1とB2、告示によらないルートCに分かれます。外せる規定は条文に列挙されたものに限られるため、重複距離や面積区画、消防法の基準は残る点を押さえておきましょう。
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