Column

省エネ計算・適合性判定

2026年07月11日

建築物省エネ法の説明義務とは?建築士が説明すべき内容をわかりやすく解説

建築物省エネ法の説明義務とは、建築士が建築主に対して、建物の省エネ基準への適合状況などを説明する制度でした。

小規模な住宅や建築物でも、省エネ性能を建築主が理解したうえで計画を進められるようにする目的で設けられた制度です。ただし2025年4月の改正で位置づけが大きく変わりました。

この記事では、説明義務の内容や対象、説明時に必要な資料、そして改正後の取り扱いまでをわかりやすく解説します。

建築物省エネ法の説明義務とは

建築物省エネ法の説明義務とは

説明義務は、省エネ基準への適合が義務付けられていなかった小規模建築物を対象に、建築士が建築主へ省エネ性能を説明する制度として設けられました。義務化に至る前段階の仕組みとして導入された経緯も含め、まずは制度の趣旨を確認します。

建築士が建築主に省エネ性能を説明する制度

建築物省エネ法の説明義務とは、設計を担当する建築士が、建築主に対して建物の省エネ基準への適合状況を書面で説明する制度です。2021年4月に施行され、主に延べ面積300㎡未満の小規模な住宅・非住宅を対象としていました。

適合義務が課されていなかった規模の建物であっても、省エネ性能の現状や、基準に適合しない場合にどのような措置があるかを建築主が理解したうえで判断できるようにすることが狙いでした。建築士は、外皮性能や一次エネルギー消費量の評価結果を踏まえ、その建物が省エネ基準を満たすかどうかを説明します。

専門知識を持つ設計者と、必ずしも省エネに詳しくない施主との間の情報の差を埋め、納得して計画を進めてもらうための仕組みだったと言えるでしょう。

説明義務が設けられた背景

説明義務が設けられた背景には、当時の建築物省エネ法が、大規模・中規模の非住宅にしか適合義務を課していなかったという事情があります。具体的には、延べ面積300㎡以上の非住宅は適合義務の対象であり、住宅については300㎡以上が届出義務の対象でした。

一方、300㎡未満の小規模な住宅・非住宅は適合義務の対象外で、省エネ性能が建築主に十分伝わらないまま計画が進むケースもありました。

 そこで、義務化の前段階として、まずは建築士が省エネ性能を「説明」することで、施主の意識を高め、省エネ化を緩やかに促す役割が期待されたのです。

2050年カーボンニュートラルに向けて建築分野の省エネを底上げする流れの中で、将来の適合義務化に至る橋渡しの制度として位置づけられていました。

説明義務の対象になる建築物と関係者

説明義務の対象になる建築物と関係者

説明義務は、どの規模の建物を対象に、誰がどう関わる制度だったのでしょうか。対象範囲と当事者それぞれの役割、そして2025年改正でどう扱いが変わったのかという最重要ポイントまでを整理します。

小規模な住宅・建築物が対象になっていた制度

説明義務の対象は、延べ面積300㎡未満の小規模な住宅・非住宅が中心でした。これらは当時、省エネ基準への適合義務も届出義務も課されていない規模で、その代わりとして建築士による説明が求められていたという位置づけです。

対象には戸建住宅をはじめとする身近な建物が広く含まれ、多くの設計案件が説明義務の範囲に入っていました。なお、建築主から説明を要しない旨の意思表示があった場合には、説明を省略できる仕組みもありました。

あくまで、これまで省エネ性能が見えにくかった小規模建築物について、その内容を「見える化」するための制度だったと理解しておきましょう。

建築士と建築主それぞれの役割

説明義務における主な当事者は、説明する側の建築士と、説明を受ける側の建築主です。建築士は、省エネ基準への適合可否を評価し、その結果と必要な措置を書面にまとめて建築主に説明する役割を担いました。

建築主は、説明を受けたうえで、省エネ性能をどの水準にするかを判断します。仮に基準に適合しない設計であっても、施主がそれを理解して選択するのであれば計画自体は進められる、という点が適合義務との大きな違いでした。

説明に用いた書面は保存しておくことが想定されており、後のトラブル防止や性能の根拠資料としても機能しました。設計者と施主が省エネ性能について同じ理解を持つための制度設計だったと言えます。

2025年改正後の位置づけにも注意する

2025年4月の改正で原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合義務が拡大したことに伴い、これまで小規模建築物を対象としていた説明義務制度は、届出義務制度とともに廃止されました。

つまり、適合義務の対象となる建物では、改正前の説明や届出は不要となり、確認申請の中で省エネ基準への適合そのものが審査されます。現在「説明義務」を調べる際は、制度が廃止され適合義務へ移行した点を踏まえることが大切です。

建築士が説明していた主な内容

建築士が説明していた主な内容

説明義務のもとで、建築士は建築主にどのような事項を伝えていたのでしょうか。説明の中身は、制度が廃止された現在の適合義務対応でも、そのまま確認・整理すべき要素として引き継がれています。

省エネ基準に適合しているかどうか

説明の中心は、その建物が省エネ基準に適合しているかどうかでした。住宅であれば外皮性能(断熱・日射遮蔽)と一次エネルギー消費量の両面から評価し、それぞれが基準値を満たすかを判断します。

建築士は計算や評価の結果をもとに、「適合している」または「適合していない」を明確に建築主へ伝えました。

あいまいな説明ではなく、根拠となる数値を示して判断を伝える点が重要でした。この適合可否の確認は、説明義務が廃止された現在でも、適合義務に対応するうえで必ず行うべき作業です。

制度の名称や枠組みが変わっても、省エネ基準を満たすかを確かめるという本質は、そのまま引き継がれています。

適合しない場合に必要な措置

省エネ基準に適合しない場合には、どのような措置を取れば基準を満たせるかを説明することが求められました。

具体的には、断熱材の仕様変更や厚みの見直し、開口部(窓)の高性能化、高効率な空調・給湯・照明設備への変更などが代表的な対策です。建築士は、基準を満たすために必要な改善の方向性を施主に示し、コストと性能のバランスを踏まえた判断を支援しました。

どの対策を組み合わせれば無理なく基準に届くかを示すことが、設計者の腕の見せどころでもありました。適合義務化された現在は、これらの措置を「説明」するだけでなく、実際に基準を満たすまで設計に反映することが必須になっています。

書面で説明・保存することが重要

説明義務では、口頭ではなく書面で説明し、その書面を保存することが重視されていました。書面化することで、どの時点でどの性能を前提に合意したかが明確になり、後の認識の食い違いを防げるためです。

省エネ性能はコストにも関わるため、記録が残っていれば「言った・言わない」のトラブルを避けやすくなります。

適合義務に移行した現在も、外皮計算や一次エネルギー消費量計算の結果、設計図書などを整え、根拠資料として保管しておく姿勢は変わりません。記録を残す習慣は、確認申請や省エネ適合性判定をスムーズに進めるうえでも有効です。

省エネ性能の確認で注意したいポイント

省エネ性能の確認で注意したいポイント

説明義務は廃止されましたが、省エネ性能を早期に確認し、計算結果や資料を整えるという実務の勘所は、現在の適合義務対応でもそのまま活きます。設計を進めるうえで押さえておきたい注意点を整理します。

設計内容が固まる前に省エネ性能を確認する

省エネ性能は、設計が固まってから慌てて確認するのではなく、プランの早い段階で見通しを立てることが重要です。断熱仕様や窓の性能、設備の選定は建物全体の計画に影響するため、後から大きく変更すると間取りやコストにも波及し、手戻りが生じます。

設計初期に基準適合の見込みを確認しておけば、無理のない仕様で着実に基準を満たせるでしょう。早い段階で性能の方向性を共有しておくことが、結果的に手戻りの少ない設計につながります。

外皮計算・一次エネルギー消費量計算の結果を整理する

適合の根拠となるのが、外皮計算と一次エネルギー消費量計算の結果です。これらを早めに整理しておくと、確認申請や省エネ適合性判定で求められる図書の準備がスムーズになります。計算は煩雑で専門性が高く、入力する条件や仕様の取り方によって結果が変わるため、数値の妥当性や前提条件の確認も欠かせません。

結果を整理し根拠を明確にしておくことが、基準クリアの確実性を高め、審査での指摘も減らします。外皮と設備のどちらで基準に届かせるかの方針を早めに決めておくと、計算のやり直しも防げます。

制度変更に合わせて最新情報を確認する

建築物省エネ法は近年改正が続いており、説明義務の廃止のように制度の枠組み自体が変わることがあります。

そのため、案件ごとに設計時点の最新情報を確認することが欠かせません。古い情報のまま進めると、不要な手続きを踏んだり、逆に必要な対応を見落としたりするおそれがあります。適合義務の対象や例外、必要な手続きは今後も見直される可能性があります。

制度の最新動向を追いきれない場合は、省エネ計算や申請に詳しい専門家に相談すると、最新基準に沿った対応を確実に進められます。計算や役所対応の代行サービスを活用すれば、制度変更への追随も含めて負担を抑えられるでしょう。

まとめ

建築物省エネ法の説明義務は、小規模建築物の省エネ性能を建築主が理解して進めるための制度でした。

しかし、2025年4月の改正で適合義務が原則すべての新築に拡大したことに伴い、説明義務制度は届出義務制度とともに廃止され、適合は確認申請の中で審査されます。

制度は変わっても、設計初期に省エネ性能を確認し計算結果を整理する姿勢は重要です。最新情報を確認しながら、必要に応じて専門家へ相談しましょう。

contact

無料で相談したい方はお気軽にお問合せください
担当者よりご連絡します。

information

お役立ち情報が無料で
ダウンロードしていただけます。

お電話でのお問い合わせ

受付時間:10:00 ~ 18:00(月~金)